170402(sun)SugarS

●Re:SugarS in 東京

 「音楽は音符の計算である」と、誰かが言っていた気がする。アカペラバンドにおいて、メンバーが減るという事は、他の形態と同様に楽器が1つなくなるのと同じと考えている。このマイナスの計算式を、SugarSはどうプラスにしていくのか。メンバー脱退からわずか1ヶ月。それでもウタウタイ集団は約束通り東京に戻ってきた。

 もれなく集まったファミリーでこの日も満員御礼。神戸を中心に活動する彼らの活躍を東京でも見ようと、関西方面から駆けつける人もいる。地域に隔てなくにぎやかに話をしたり、顔を合わせれば挨拶を交わせたりと、このあたたかさもひとつの魅力だと私は思っている。そんな中で私もペンとノートを片手に、SNS上でしかまだ目にしていない今のSugarSをいつもと同じように…と言いたいところだが、やや緊張しつつソワソワと待っていた。

 会場BGMと多くの会話が混じり合う中、先に遠くなっていったのは前者。瞬間、それに覆いかぶさる形で会話は歓喜の悲鳴へと変わった。ファミリー側のレスポンスの速さは健在。さぁ、肝心のSugarSはどうだ!?


 好戦的な空気を察知し、無鉄砲に歌い踊り出す<ロッケンロールマジック>。5人の音は予想をはるかに超えた勢いで飛んできた。なかでも、あらゆる面でバランスをとっていると感じていたピエールさんが、ボイス・パーカッションを受け継いだ点。想像だにしていなかったこの策が、ライブスタート前のソワソワを打ち砕く。「こんなにかっこいいものを隠し持っていたなんて!」と、やられた感で悔しさ半分、嬉しさ半分。そして、やけにオリジナル曲が続くな…と思っていたところでHEROさんの「今日はオリジナルが9割です」とのひとこと。これには思わず「マジか」とつぶやいてしまう。はじめて彼らを聴いたときにオリジナル曲に惚れたこともあり、早くもハート周りの糖分を過剰摂取して帰る覚悟が決まる。

 新体制のリスタートを彼らは幾度、切ってきたのだろう。以前には、ボーカルのスケさんの加入があった。彼が新メンバーとなりはじめてリリースされたオリジナルアルバムに『THE Sugar』がある。彼らの活躍を加速させるきっかけとなった1枚と言っても過言ではないと思う。その中のまさに彼がリードをとる<simple>が歌われる。リリースから3年が経ち、収録されているよりも成長を感じた歌声。ゆっくりとやさしく語りかけるように歌うのスケさんが、SugarSにたしかな力強さをもたらしてくれるボーカリストであることを、再度感じさせられた1曲であった。


●シュガーズカリキュレーター

 ここで冒頭の「音楽は音符の計算である」という話に戻ることにしよう。ピエールさんとHEROさんの新たなリズムタッグにも耳が慣れてきた頃、その応用編の授業は始まった。そう、私はすっかり忘れていたのだ。SugarSは全員がフルにリードボーカルをとれるアカペラバンドであるということを。HEROさんが中央にビシッと立ち<SPIRIT>を歌い出す。この場合、ピエールさんのパートがベースに変わるのはすぐに答えを導き出せた。それでは、ボイス・パーカッションは誰? 考えるスキを与える間もなく、颯爽と音が鳴り出した上手に目をやると、いつもは晴れやかなスマイルが印象的なボーカルIWAjIさんの真剣な面差しでリズムを刻む姿が。加えて次の曲ではリードをとる<ハッピーマン>が控えており、すぐさまいつもの笑顔で言葉を放つというこのタフさ。ピエールさんがリードをとる曲も、もちろんしっかり用意されている。つまり、リズムだけで【ピエール×HERO】【IWAjI×ピエール】【IWAjI×HERO】という3通りが存在する事態。こんなにたくさんの音の公式を投げかけられるライブはさすがにはじめてで、脳内が軽くパニック。そしてこのトライアングルには脱帽。

 正解も不正解もない音の玉を五線譜上ではじき出すというのは、華やかそうに見えて実は地味で根気がいる作業だと思う。それが陽の目を見たとき、ファミリーの歓声との掛け合わせではじめて生まれるこの楽しさ。それぞれのアンサーで動き出す様々な表情やあふれる感情。これこそライブの醍醐味であると改めて感じさせてくれた。また「これが今のSugarSだ!」というのをありありと見せつけられ、1stステージが終わってしばらくは放心状態であった。

 もちろんそれはリズムだけでなくボーカル・コーラスワークにおいても。フリートークのコーナーでは、メンバー同士でそれぞれの歌い方を讃え合う。特にKUMAさんがHEROさんについて話した「歌詞のフレーズと体の動きがシンクロしている」という件には、大きく頷いてしまった。身振り手振りが大きいというのは、それだけで伝えようとする気持ちが伝わってくる。ウタウタイとして何年の歳月を重ねても、それが尽きることなくあふれるHEROさんのステージパフォーマンスは私も大好きな点である。

 そしてKUMAさんはと言えば、この日はどちらかと言えばおだやかな表情が印象に残っている。ライブ序盤に歌われた<ユメツバサ>での出来事。いつもならばIWAjIさんの空に浮かべそうなふわりとした歌声に聴き惚れるところだが、ふとコーラスに目をやるととてもやさしげ。先のフリートークで「加入当時は攻めしか持っていなかった」と言われていた彼が、自分の武器を一時的に封印してメンバーの護衛にまわるようなやさしい感覚を纏っているのに、なんだかほっこりしてしまった。

この【のスケ×KUMA】のやわらかさもこれからクセになりそうな予感。そしていまさらながら、このコーラスがあるからIWAjIさんの声が活きるのだと。

 それぞれの持ち味を活かし、試し。今はその相乗効果によって改めてSugarSというバンドを高めている時期にあるのだなと思うシーンがとても多かった。

5人になってもオリジナル曲が褪せることなく、むしろ彩り鮮やかに感じられたことは、なにより喜ばしかった点。こうしている間にも続々と5人でのレパートリーは増えているようだ。変化を恐れず前進する彼らのウタが、よりたくさんの人にプラスの力を与えていくことを、日々を願っている。


★最新動画<切手のないおくりもの(cover)>

(L→R)ピエール・IWAjI・のスケ・KUMA・HERO



■ライブタイトル『SugarSワンマンライブ』

■日時:2017年4月2日(日)12:00~

■会場:東京・高田馬場Live café mono

■SET LIST

1.ロッケンロールマジック

2.応援のウタ

3.オンリーラブ

4.ユメツバサ

5.Simple

6.星屑スマイル

7.SPIRIT(cover)

8.ハッピーマン

―2nd―

1. 大切な人

―フリートーク【このメンバーのこの歌い方が好き】―

2. cancel×cancel

3. 幸せかくれんぼ

4. ひとりぐらし

5. 幸せのかけら

6. Clap your hands

7. スーパーマン

―アンコール―

1. 歌うたいのバラッド(cover)

2. オワリはじまり(cover)

―アンコール2―

1.I feel good(cover)

―アンコール3―

1.ダイジョーブ!

ぱんだ・ら・もーど

ぱんだら【お仕事▶DTP制作】 パンダを集めるぱんだらの様子。 ツイッター@mikichi_panda

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